加害者・被害者とは

  ■ 加害者と被害者の違い
自動車損害賠償保障法 第三条 (自動車損害賠償責任)
自己のために自動車を運行の用に供する者は(運行供用者)、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、
これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、 被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

運行供用者とは・・・・
加害自動車の運行を支配できる立場にあって、その自動車を運行させることによって利益を得ている人のことを意味する事から、 自動車の所有者も運行支配・運行利益があるといえるため、運行供用者に当たる。
(自動車の所有者だけでなく、無償で自動車を借り受けている者や使用者も運行供用者として扱われる場合がある。)
過失大が加害者とするのが一般的な考えですが自賠責法では、過失の大小に関わらず怪我をさせた方が加害者となる。
例えば・・・・
交通事故により、両運転士が怪我をした場合には両方の運転手が加害者でもあり被害者でもある。
よって、お互いに「被害者請求」ができる事になる。
1. 運行供用者と運転者が無過失であること(不注意がなかったこと)
2. 被害者または第三者による故意または過失があったこと
3. 自動車に構造上の欠陥や機能の障害がなかったこと
上記の免責3要件を証明しなければ、加害者は賠償責任を負うことになる。

  ■ 立証責任
自賠責法 第3条
(中略)その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。
これにより、被害者の立証は不要となる。
※ 被害者保護の観点から、加害者側の責任を加重したり、故意や過失の立証責任を加害者側に転換した特殊不法行為(自賠責法等)という。

民法 第七百九条 (不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
※「一般不法行為」については下記の事を被害者自身が証明しなければならない。
1. 権利侵害行為があったこと
2. 故意(わざと・意図的)または過失(不注意・うっかり)があること
3. 損害が生じていること
4. 損害と権利侵害行為に"因果関係"があること
では、なぜ「被害者」が立証責任を負うことになるのか?

「悪魔の証明」
「起きないこと」や「存在しないこと」を証明することは困難。
なぜなら、「ある(存在する、起きる)」ことを証明するためには一例を挙げれば良いだけ。
しかし、「ない(存在しない、起きない)」ことを証明するためには、世の中の森羅万象を調べ尽くさなければならず、
それは不可能に近い。
例 「カラスは黒い」を証明するためには黒いカラスを1羽捕まれば良い。
   「紫色のカラスはいない」を証明するためには全てのカラスを捕まえて証明する必要がある。

上記の例から
1. 隣家から騒音があり、とても耐えられないほどの騒音だったこと
 (騒音ではないと証明するには1件1件回る必要がる。)
2. 隣家の人が、わざと、あるいは不注意で騒音を出したこと
3. 健康を害している事実
4. 健康を害したことと騒音との因果関係
よって、加害者ではなく、被害者が立証しなければならない。
これを交通事故の場合として考えると・・・
1. 権利の侵害があったこと
2. 相手のドライバーに故意または過失があること
3. 損害(物損、怪我など)があること
4. 交通事故による損害であること
これらすべてを被害者に立証させる事はあまりに酷いため、上記のように自賠責法は特殊不法行為に分類される。